グループメンバー

神山美樹 (特任研究員)、大亀美桜 (M2)、古川夏輝 (M2)、藤本磨琴 (M1)

研究概要

 グループの研究テーマを一言で言えば、”がん転移とASKファミリー”です。生体は常に外界の様々な環境変化に曝されており、恒常的に多様な物理化学的、あるいは生物学的ストレスを受けています。細胞がこれらのストレス刺激を受容してアポトーシス、炎症反応、増殖、分化などの様々な生理的応答へと変換するメカニズム、すなわちストレスシグナル伝達機構を稼働させることで、生物はそれら多種多様な環境変化に適応しています。従って、ストレスシグナル伝達機構の破綻は異常な細胞増殖や炎症、正常なアポトーシスや細胞分化からの逸脱などを引き起こします。これらの形質を獲得することで細胞は次第にがん化していき、浸潤・転移能を獲得することでその悪性度を増しながら、やがては周囲の組織に浸潤して遠隔臓器へと転移していくことが知られています。またこれらのがん細胞の形質は、がん細胞自身だけではなく周囲の様々な正常な細胞種によっても制御され、がん転移における”がん微小環境”の重要性が提唱されてきました (Hanahan, D., Weinberg, A. Cell, 2011)。
当研究室ではストレスシグナル伝達経路を構成するASKファミリー分子に着目し、発がんにおいてASKファミリー分子が様々な役割を担うことを明らかにしてきました (review article: Ryuno, H., Naguro, I., Kamiyama, M. Adv. Biol. Regul., 2017; Kamiyama, M., Naguro, I., Ichijo, H. Cancer Sci., 2015)。しかし、がん転移における役割は解析されていなかったことから、本グループではASKファミリー分子のがん転移における機能解析を進めています。がん転移に関与することが知られる細胞種でのASKファミリー分子の関与を検証するため、全身性欠損マウスだけでなく組織特異的なコンディショナルノックアウトマウスなどを用いた、生体レベルでの解析を主としています。さらに当研究室で長年培われてきた分子生物学的な解析も併せて進め、最近血小板におけるASK1-JNK/p38経路がADP受容体の1つであるP2Y12のリン酸化を制御することで血小板機能及びがん転移を正に制御することを明らかにしました (Kamiyama, M. et al. Cell Death Differ., 2017; commentary in Kamiyama, M. et al. Cell Cycle, 2018)。一方解析を進める中で、その他の関与メカニズムも示唆されたことから、引き続きがん微小環境におけるASKファミリー分子の重要性を明らかにしていきたいと考えています。