2021年度 周グループ紹介

メンバー

周翔宇 (特任研究員)、池村美咲 (M1)、田口貴一 (B4)

研究概要

 私たちの体を構成する細胞は、様々なストレスを感知し、それらに対して応答する機構を備えています。DNAの損傷やがん遺伝子の活性化、ミトコンドリアの機能障害などが生じた際に、細胞はそれらに応答して自らの増殖を不可逆的に停止させることがあります。このような細胞応答を「細胞老化」と呼びます。細胞老化を引き起こした細胞 (老化細胞)は、DNA損傷応答経路の持続的な活性化、細胞周期抑制因子の発現上昇、肥大化や扁平化を伴う形態変化など、様々な面において正常な細胞とは異なる特徴を持つことが、培養細胞を用いた数多くの研究により明らかになっています。また、生体内にも同様の特徴を持つ老化細胞が存在し、その数が加齢と共に増加することから、細胞老化が個体レベルの老化に関与するのではないかと考えられてきました。近年、老化細胞を選択的に除去できるようにした遺伝子改変マウスにおいて、加齢に伴う様々な部位の機能低下や加齢性疾患の病態が緩和することが示され、細胞老化には個体老化を促進する役割があることがわかりました。このような知見をもとに、生体において老化細胞を選択的に排除することが、個体老化や加齢性疾患を抑制し、健康寿命を延伸するための新たな戦略になりうると期待されています。
 生体から老化細胞を選択的に排除する方法の一つとして、老化細胞においてのみ生存維持に重要な機構を阻害することが有効であると考えられます。しかし、老化細胞特異的な生存維持機構は近年明らかになり始めたばかりであり、その全体像は未だ分かっていません。本グループでは、正常細胞・老化細胞間の生存に必要な遺伝子の違いを網羅的に解析することで、新たな老化細胞特異的生存維持機構を明らかにしたいと考えています。