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早河グループ2010

メンバー

  早河輝幸(特任助教), 加藤久美子(M2), 早川亮一(M1)

 


研究プロジェクト

 早河グループの特徴は,モデル生物として線虫C.エレガンスを使っていることです。グループのプロジェクトとしては以下の2つがあります。
 1) 線虫C.エレガンスにおけるASK1の機能解析
 2) レポーター線虫を用いたASK1-p38経路活性化因子のスクリーニング
 1)のプロジェクトに関してはグループヘッドの早河が,2)のプロジェクトに関しては大学院生の加藤・早川(注:グループヘッドの親戚ではない)が,それぞれ担当しております。

研究の背景

 ストレス応答におけるシグナル伝達経路の全容を解明することは,病態生理における治療および症状緩和のターゲットを発見する上で不可欠の課題です。その中でも,当研究室でターゲットとしているリン酸化酵素Apoptosis signal-regulating kinase 1 (ASK1)は種々の病態生理学的状況において,疾患の形成および進行に寄与することが報告されてきました。
 私たちは,新しく線虫C.エレガンスというモデル生物を研究室に取り入れました。この線虫という生き物は,生活環が約3日と短く,遺伝学的・生化学的な解析に適しているという特長を持っています。興味深いことに,線虫において発見された様々なASK1の生理機能が,哺乳類においても保存されていることが明らかとなりました(Hayakawa T et al., Microbes Infect., 8, 1098-1107(2006))。このことから,解析が容易な線虫を用いてASK1が担う新たな生理機能や活性化因子を発見することで,これらを哺乳類動物に還元できるだろう,というのが早河グループの共通した認識であり,目標でもあります。

 以下,冒頭でお示しした2つのプロジェクトについて簡単にご紹介します。
 

(1)線虫におけるASK1の機能解析

 私たちは線虫におけるASK1の相同分子(NSY-1)の新しい機能を探索するため,NSY-1を欠損する線虫の表現型を解析ました。その結果,これまでに報告されなかったいくつもの表現型を見いだすことに成功しました。そのいずれもがストレス応答に関する表現型であり,NSY-1がストレス応答に重要な働きをしていることを再確認することとなりました。
 その中でもわれわれが着目しているのは,無酸素に対する応答です。無酸素状態は,血管系が未発達な胎児の段階や,虚血組織(血流が血栓や圧迫により阻害された組織),固形がんの深部などに見られる,文字通り「酸素がない」状態です。この状態に線虫を置くと,野生型とNSY-1を欠損する変異体の間で生存率が異なることを発見しました。この現象の正体はまだまだ未解明な部分が多く,グループヘッドの早河がこの解析に取り組んでおります。

(2)レポーター線虫を用いたASK1-p38経路活性化因子のスクリーニング

 私たちはまたNSY-1の活性を極めて高度に反映するレポーター線虫の作製に成功しました。線虫C. エレガンスの体が透明であることを利用して,NSY-1の活性に依存して転写量が調節される遺伝子のプロモーター下流に,緑色蛍光タンパク質(GFP)をつないだDNAを線虫の体内に発現させることで,NSY-1活性を反映したレポーターとしました。このレポーターの蛍光強度を指標として,現在全ゲノム網羅的に活性化因子・不活性化因子の探索を行っております。

 早河グループの研究内容に関してご質問・ご意見などがございましたら,下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。

hayakawa アットマーク mol.f.u-tokyo.ac.jp